『アッシリア滅び、バビロン滅び、ペルシア滅び、そして今カルタゴも滅びさりぬ。つぎに滅ぶるは、これローマか…』 小スキピオ ・ ・ ・ |
『ハイパージェリル』 |
全勢力・作戦2 |
「陛下。前方より発光信号。バーン様のゼイエガと確認しました」 通信士の報告を受け、ドレイク・ルフトは薄い笑みを浮かべた。ゼイエガの後方からは、明らかにバイストンウェルとは別種の技術体系に基づくとわかる戦艦群が、隊伍を組んで接近してくる。 「…この地上にあっては、我等は粛正されるべき存在と思っておったが…時代は、未だ儂を必要としておるようだな」 「素晴らしい! 貴女はまるでジャンヌダルクのようだ!」 傍らを飛ぶドラムロのパイロット、スグル・ミタライ曹長に賞賛されたジェリル・クチビは、くすぐったそうな笑みを浮かべる。 「こそばゆいね。ダブリンの鼻つまみがジャンヌダルクとはね」 「いえ、貴女こそラ・ピュセルの再来です!」 スグルの興奮が乗り移ったように、ジェリルに従うネオジオン将兵の間に狂熱が広がる。 「…あれが素晴らしいだって? とんでもない、あれは死相だ。ジェリルは…オーラの力は、人を歪めさせ、戦いの中に取り込もうというのか!?」 レナ・ウォーカー准尉は、仲間達を取り込んだジェリルのオーラ力に、ただ恐怖することしかできなかった。 「しまったっ! …私は、なんて大切なことを忘れていたのだ! 気づいていなければ…当然気づいていなければいけなかったのに!」 呉学人が握りしめた報告書には、ドレイク軍のオーラシップ『ゼイエガ』と、ネオジオンとの接触が記されていた。ドレイク軍とネオジオンとの同盟…その事実に、乏しい手勢を喪ったシャビロ・キーツは口元を歪ませ、今ひとつ足並みの揃わないOZ、カラバ連合軍は、予想を遙かに上回る敵戦力と激突したことで、その弱点をさらけ出していた… 「フフフ…カラバとOZは、かつての敵同士とのことであったな。手を握ったばかりで、ろくな共同訓練もしていないと見える。その未熟な連係、つけ込ませてもらうぞ。…全オーラバトラー隊に通達! くさび形陣形を組み、全火力をOZ、カラバ両軍の間隙に集中させよ! ネオジオン艦隊にも、左様申し伝えいっ!!」 ドレイクの命令一下、伝令役の黒いビランビーが四方に散る。中世世界さながらのバイストンウェルでは、ミノフスキー粒子による指揮系統の混乱は致命的な物になり得ない。ギブン領襲撃以来実戦経験を積んできたアの国の騎士達は、巨大な馬上槍となって包囲網を食い破らんとする。その穂先では、赤い髪の女ジェリル・クチビと、聖戦士ショウ・ザマの凄絶な一騎打ちが繰り広げられていた。 「ジェリル・クチビっ! 覚悟っ!!」 「いっけぇぇぇぇっ! ハイパー・オーラ切りだぁぁぁっ!!」 ショウ・ザマとチャム・ファウの声が唱和し、必殺の斬撃がレプラカーンを袈裟懸けに斬り下ろす! 「やったか…何っ!?」 「なめるなぁぁぁっ!!!!」 その瞬間、ジェリルの機体から信じがたいほど大量のオーラ力が噴出し、ショウのビルバインを木っ端のごとく吹き飛ばした。 「何だ、このオーラは…憎しみなのか? 」 カラバが誇る聖戦士、クロス・ステンバーグが慄然とする中、ジェリルのレプラカーンは異形の変化を遂げていた。 「きゃはははははっ! 敵が小さく見えると言うことは、アタシが勝つということだ! ショウ・ザマ! 今日こそはってヤツさ!」 摩天楼の如き巨人と化したレプラカーンは、小型のビルほどもある剣を揮って、不用意に接近したブッフバルト・エンテンバークのテキサスガンナーを、蝿のように叩き潰す。 「うろたえるな! 機動兵器が巨大化することなどあり得ない! 敵のトリックに惑わされるな!」 浮き足立つOZ兵を叱咤するブランホード・ミデュラス上級特尉の唇は、その言葉とは裏腹に、からからに乾いていた。 「オーラの力は、マシンをも巨大化させるというのか!?」 「幻じゃないの?」 「実際に剣を受けてる! うわっ!」 ハイパー・レプラカーンの斬撃を自らの剣で受け止めたビルバインは、その剣圧ではじき飛ばされた。バランスを崩したビルバインを、ハイパー・レプラカーンの巨大な掌がつかみ取る!? 「最期だよ! ショウ・ザマっ!!」 「南無三っ!」 「やらせないよっ!!」 チャムが、その小さな両腕を精一杯広げて、ショウを庇った瞬間…それは始まった。 ハイパー・レプラカーンの巨体にひびが入り、崩壊が始まる。…ジェリルの狂気に耐えかねたかのように。 「ジェリル・クチビっ!!」 ハイパー・レプラカーンの拳を貫いて放たれたビルバインのオーラキャノンが、数奇な運命にもてあそばれた女性シンガーの、22年の生涯を火球に変えた…。 「あれがオーラの力…聞きしにまさるとはこのことですな」 ウィル・ウィプスの環境に設置された大型スクリーンの中で、ネオジオンの将、ユーリ・ケラーネは大げさに驚いてみせる。食えない男ではあるが、その驚きは演技ばかりではないようだ。 「どのような力であれ、制御し切れねば破滅を呼ぶ。その理、地上においても同じと聞いたが?」 ドレイクのいらえに、ユーリは軽く肩をすくめる。ネオジオン、ドレイク連合軍の包囲網突破作戦は成功した。多くの犠牲を払う羽目になったとはいえ、ジェリルによってそれ以上の損害を受けたOZとカラバにも、彼らを追撃する余力は、もはや残されていないようだ。 「ごもっともですな。…それでは陛下、我等の本拠地までお供させていただきましょう。総帥閣下もお待ちかねです。宇宙空間という物も、なかなかに良い物ですよ」 ▼作戦後通達 1:ドレイク軍は、大きな打撃を受けながらも包囲網の突破に成功しました。ネオジオンのキリマンジャロ基地から、宇宙に上がった模様です。 2:OZジャミトフ派の間では、作戦失敗の責任はカラバにあるとの見方が広がっています。 3:聖戦士ジェリル・クチビが戦死しました。 |
『地球圏統一の為に』 |
OZ・作戦3 |
「…一年戦争を思い出すな」 ガディ・ギンゼー準級特佐は、アレキサンドリアの艦橋でつぶやいた。眼下には、海面を埋め尽くさんばかりの一大輸送船団が、カリフォルニアベースを目指して航行を続けている。彼は一年戦争の末期、カリフォルニアベース攻略作戦に従軍した経験がある。 「宇宙から来た侵略者ども。貴様らの這いだしてきた地獄へ、この俺が叩き返してくれる。地球は人類だけの物だってことを憶えておくんだな」 彼の言う人類には、スペースノイドは含まれていない。山賊同然の旧レジスタンス達もだ。解放戦線を吸収し、カラバを同盟相手にしたトレーズ総帥の行動は、彼の理解の範疇外にあった。 「…バスク特佐のお言葉、考えておくとするか」 そんな彼の頭上を、後方の空母機動部隊から発艦した機動兵器群が、整然たる隊伍を組んで進撃していった。 帝国軍最後の地上重要拠点、カリフォルニアベース。旧連邦軍の手になるこの拠点は、単一の基地を示す物ではなく、カリフォルニア一帯に存在する軍事基地群の総称である。その中枢部に存在する作戦司令室で、兵棋盤を睨んでいたシャビロ・キーツは、秘書を務めるルーナから不意の来客を知らされて渋面を浮かべた。 「…ヘルマット将軍。貴殿の艦隊には内陸部への移動を命じてあったはずだが?」 「その命令が承服できんから、わざわざこんなところまで足を運んだのだ! 何故海岸陣地から兵を引く!? 奴らを易々と上陸させてやるつもりかっ!」 シャビロは、カリフォルニアの海岸線に設けられた要塞線から兵力を引き上げ、内陸部へと再配置していた。水際でOZ軍を迎撃するつもりだったヘルマットとしては、当然面白くない。 「貴殿は先のジャブロー戦の戦訓から何も学ばなかったのか? OZ軍相手に水際での防御作戦を行っても、犠牲のみ多く効果は期待できん。今ここで兵力を無駄に消耗するなど愚の骨頂。先の作戦会議で説明したはずだがな」 シャピロの戦略は、一言で言えば内線防御を軸にした遅滞作戦である。OZの奇襲で戦力の過半を喪った各地の帝国軍残存兵力を、このカリフォルニアに集結させて再編成することで兵力の密度を上げ、追撃するOZに出血を強いながら後退を続けて、最終的にはアステロイドベルト基地まで引いたところで帝国本国からの増援艦隊と合流、疲弊したOZを一機に叩き潰すのだ。 「だからといって、地球の猿どもをこれ以上のさばらせるのは我慢ならん! 俺は俺で勝手にやるぞ! シャビロ、貴様はせいぜい後方で震えているがいい!」 「待てヘルマット! 貴様、作戦を無視するつもりかっ!!」 ヘルマット将軍は、入ってきた時同様、足音荒く作戦司令室を出ていった。 「この程度……回避するまでもないわ」 ゼイファーの攻撃を易々と凌ぐモニカ・プティング2級特尉。その姿を、アレキサンドリアの一室に設置されたモニターで眺めていたナミカー・コーネルは、満足げに頷いた。 「いじり甲斐のありそうな娘ね。良い素材だわ。フィフスはこの娘で決まりかしらね。えっと、こっちの子は…あらら」 勇敢にもシャピロの機動兵器に挑んだレオン・ブラッド特士は、奮戦空しく返り討ちに合う。ナミカーは、彼を映していたモニターを無造作に消した。 「さて、素材の選定はおしまいっと。…そちらはいかが? 有望そうなパイロットはいて?」 ナミカーが声を掛けたのは、同じ部屋でモニターに見入っているFI社の社員だった。 「ええ、まあ。さすがはOZ、腕のいいパイロットが揃ってますね。…彼なら後期生産型の性能を引き出してくれるんじゃないかと思ってますが」 彼の眺めているモニターの中では、ナーディル・アブドゥフ1級特尉の百式改が、トッドのビアレスの猛攻をかろうじて凌ぎ、不用意に割って入ったスカルガンナーを撃墜していた。 「ノウルーズ後期生産型は、我がFI社が社運をかけて投入する戦略機種です。彼は良い宣伝役になってくれそうですよ」 彼らは、パイロット達を心を持った人間として捉えてはいない。単なる素材であり、道具として認識している。そのことは確かに非道であり、人として間違った認識だろう。人は戦争という巨大な狂気の中では、そうでもしなければ自分を保てないのかも知れない。 そんな彼らの思惑も知らず、兵士達は前線で凄絶な殺し合いを続けていた。今日この日を生き延びるために。 「そう焦るなよ…遊んであげるからさ!!」 「そんなにやられたいのかよ……なら望み通りにしてやるぜ!!」 ゼロ・ムラサメのガンダムMKIIが放ったビームを、トッドのビアレスがオーラバリアではじく。ヘルマット隊が暴走して自滅したことにより、帝国軍の防衛線には大きな穴が開くことになった。その穴を埋めるべく差し向けられたゲア・ガリング隊であったが、その隙を見逃すほどOZのブライト特佐はお人好しではなかった。 「ええい! オーラバトラー隊は何をしておる! 敵を支えきれんというのか!」 ゲア・ガリングの艦橋で唇を噛むビショット・ハッタ。その傍らでは、総指揮官たるシャピロ自らが戦闘メカを駆って陣頭指揮を行っている。とても退けるものではない。彼が絶望しかかった時、転機が訪れた。 「……そろそろ潮時かもしれんな。無人機を全機出せ! 作戦は最終ステップに移行する。引き際を誤るなよ!」 シャピロの命を受け、カリフォルニアベースの機動兵器発進口から、おびただしい数のスカルガンナーやターミネーターポリスが発進し、OZの機動兵器群に襲いかかった。帝国軍は入れ替わりに後退していく。後方で待機していたムゲ帝国の戦艦群が、速やかに彼らを回収した。OZ軍の追撃は、無人機群に阻まれて思うに任せない。 「よし! 全艦ディフェンス・バリアを展開! このまま大気圏を離脱する!」 次々と艦体を位相空間に滑り込ませ、不可視となって撤退する帝国艦隊。ようやく無人機群を突破して追いすがったOZの機動兵器群だったが、相手が見えないために思うように攻撃できず、唯一ディフェンス・バリアを持たないゲア・ガリングに攻撃を集中した。 「今度はお前らが追われる番だ!」 ミルトン・グラス特士の射撃は惜しくも的を外したが、エン・ホオズキ1級特尉の放ったビットガンが、ゲア・ガリングに取り付けられた大気圏脱出用の大型ブースターを貫いて爆散させる。 「おのれ地上人め! 全軍退け、退くのだ〜っ!!」 宇宙に逃れるすべの無くなったゲア・ガリングは、圧倒的なOZ軍を相手に撤退戦を行う羽目になった。トッド、ガラミティら、多くの名のある騎士を撃墜され、ゲア・ガリング自体も中破に追い込まれながらも、ビショットは遁走に成功する。 そして地球上で最後の帝国基地だったカリフォルニアベースは、ここに陥落の日を迎えた。 ▼作戦後通達 1:帝国艦隊は地球から撤退し、月面で再結集を図っています。 2:ゲア・ガリングは宇宙への脱出に失敗し、その所在は不明です。 3:この戦いの戦果を元に、強化人間の被験者に、モニカ・プティング2級特尉(646)が、ノウルーズ後期生産型のテストパイロットに、ナーディル・アブドゥフ1級特尉が、それぞれ選ばれました。お二人には総務課で抽選を行う際、優先権が与えられます。 |
『悪夢との決別』 |
OZ・作戦1 |
地球を遙かに見下ろす衛星軌道。宇宙要塞ア・バオア・クーを発したムゲ・ゾルバドス帝国艦隊は、巨大な機材の設置作業を行っていた。オゾン層破壊衛星。かつて惑星ネメウスの全生命体を死滅させ、三年前には地球上の都市の七割以上を、瞬時に焼き払った恐怖の大量破壊兵器である。 「…解せんな。シャピロとてこの星の生まれのはず。何故自らの故郷を焼き尽くそうとする?」 狂気とも言えるこの作戦の発案者は、地球人であるシャピロ・キーツであった。遙かな古代、カルタゴの将軍ハンニバルの猛攻に押しまくられていたローマ帝国の将軍ファビウスが、カルタゴの暴威に対抗するために行った焦土戦術。これはそれを全地球規模に拡大した物なのだ。北米カリフォルニアに集結したシャピロ軍や、百鬼軍の移動要塞に被害を及ぼさないよう、攻撃箇所は慎重に選定されている。 「そんなことはどうでもいい! 帝王様の温情を踏みにじり、グレスコの腑抜けにつけ込んで我等に牙を剥いた、身の程知らずの猿どもを一匹残らず焼き尽くすのだ!」 激昂するギルドローム将軍を、デスガイヤー将軍はさげすみのこもった目で見る。 「戦いとは、相手が弱ければつまらない物。このところ、ゲリラの相手ばかりで体がなまっていたところだ。せいぜいあがいてもらわなくては、俺自ら前線に立つ甲斐がないわ」 OZ艦隊接近の報を受けた将軍達は、それぞれの機動兵器のコクピットから艦隊に迎撃命令を出した。 「まただ…またこの光景…」 フォーリュス・ゼリュウズ上級特尉は、衛星軌道上に並ぶ無数のオゾン層破壊衛星と、それを護衛する雲霞の如き帝国軍の姿に、強い既視感を憶える。…それは確かに、3年前の悪夢の再現だった。 「…今までの戦いが無駄だったなんてことは絶対にさせない。シーリスや叔父さんと叔母さんを守るためにも、ここはなんとしても衛星を阻止する!!」 フォーリュスの脳裏に護るべき人々の笑顔がよぎる。ラーディッシュを発艦したプロトZガンダムX2は、バーニアを全開にして群がる敵機のただ中に突っ込んでいった。 「あそこへ! あそこへたどり着きさえすれば!」 アーノルド・ウィノー2級特尉のガンダムMkIIIは、最新鋭機の機動性をフルに発揮して、オゾン層破壊衛星の一つに突貫していた。帝国軍のグザードが次々に立ちふさがるが、牽制の射撃でひるんだ脇を、全速力ですり抜けていく。 「まずは一つ!!」 MkIIIの連装ビームキャノンが、衛星兵器を火球に変える。ジムのビームスプレーガンでは破壊が困難だった怪物も、この新型ガンダムなら容易に破壊できるのだ。 「あの時、この機体があったらな…とと、感傷にひたってる場合じゃないな。次行かないと!」 衛星兵器の数は多い。アーノルドのMkIIIは、次なる獲物を求めて再び大加速を開始した。 「アリサ! 突出しすぎるな! 敵の数は多い。ロッテの相互支援ができなくなったら、君でも危ないぞ!」 ログレス・ファングバード2級特尉のブラックファルコンは、奔馬の如く突撃を続けるアリサ・ファングバード上級特尉のブラックイーグルに、必死になって追いすがった。 この二機種は、共にカラバの黒騎士と謳われるアラン・イゴールの愛機であるブラックウィングの量産型として開発された機体なのだが、開発時期が違うためにその性能には大きな開きがある。 「悪いな、ログレス。今はそれどころやないんや。…最悪、ぶつけてでも止めたるわ。…もうアレは勘弁やからな」 彼女の脳裏に焼き付いた光景…友軍の射撃を物ともせず、大輪の花を咲かせた衛星兵器。目の前で、何億という罪のない人々が焼かれていく絶望と無力感…身も心も焦がすが如き焦燥が、彼女をこの突撃へと駆り立てるのだ。 「もらった!!」 ビームと5連装ミサイルが、衛星兵器の装甲を杉板のように打ち抜いて爆散させる。まとわりつくゼイファー改を無造作に撃墜し、アリサが次の獲物を狙って機首を巡らせたその瞬間、ジャンクと化した衛星兵器の蔭から、巨大な人型兵器が襲いかかってきた。デスガイヤー将軍の愛機、ザン・ガイオーである。 「クククッ! ザコどもにしてはやるな! だがこれ以上はやらせん。楽しませてもらう…何!?」 「アリサ! 先に行け! こいつは俺が…うわぁっ!」 アリサのブラックイーグルを庇って、ザン・ガイオーに突貫したログレスのブラックファルコンだったが、ザン・ガイオーの剛腕でひとたまりもなく破壊される。しかしその一瞬の隙に、ブラックイーグルは危地を逃れ、さらなる衛星兵器を破壊するべく加速していった。 「ログレス…死ぬんやないで。あとで必ず救助したるさかいな!」 手が白くなるほど操縦桿を握りしめるアリサの視界が、わずかににじんだ。 「悪いが、遊んでる状態ではないのでね」 ロバート・ラプター上級特尉は、愛機シグルーンで帝国軍を翻弄しながら敵艦隊中枢部を目指す。目標は敵の旗艦である。 (衛星兵器の制御は、戦艦で行っているはず。ならば中枢を叩いた方が効率的でしょう) デスガイヤー艦に狙いを定め、無反動砲を連射するシグルーン。艦を任されていたガンコツの必死の操舵で何発かは空を切るが、それでもいくつかは着弾の炎を花開かせる。 「おのれ地球ザル! 対空砲火! 主砲、撃てぃ!」 アイスキャンデーのような火箭を、シグルーンはあるいはかわし、あるいはプラネイト・ディフェンサーで退けながら、艦橋へ肉薄する。 「3年前の屈辱を晴らさせてもらいますよ」 艦橋にたたき込まれた無反動砲弾は、衛星兵器の制御ユニットを破壊し、副砲塔を直撃した砲弾は、激しい誘爆で艦全体を炎に包む。 「借りは、確かに返させていただきましたよ。…もっとも、もう必要なかったかも知れませんが」 シグルーンのモニターには、最後の衛星兵器が大爆発を起こす様子が映し出されていた。 「うはははははは。どうした地球のロボット! 貴様ら如きザコにこの俺が落とせるとでも思っておるのかっ!」 デスガイヤーのザン・ガイオーは、鬼神の如き暴威を揮っていた。飛鳥のコスモクラッシャーを溶解液で撃墜し、アーノルドのガンダムMkIIIをミサイルの爆炎で包み込むと、ユウキ・エイガ2級特尉のランドライガーMを、無造作に片手で叩き潰す。 「デスガイヤー。最後の衛星兵器が破壊された。引き時だぞ」 ギルドローム将軍からの通信に、デスガイヤーは太い唸り声を漏らす。万一衛星攻撃が失敗した場合の作戦は、既にシャピロから指示されている。地球人に従うのは癪だが、デスガイヤーとて歴戦の強者である。シャピロの指示の正しさは理解していた。…その正しさが、一層癪に障るのであるが。 「俺が殿を務める! 総員、撤退戦を開始しろっ!」 整然と陣形を組み、撤退していく帝国艦隊。しかしそれを追撃する力は、既にOZ衛星攻撃部隊には残されていなかった…。 ▼作戦後通達 1:帝国軍のオゾン層破壊作戦は失敗しました。地上に被害は出ていません。 2:帝国艦隊は、シャピロ艦隊と合流した模様です。 3:ロバート・ラプターに星勲章、アリサ・ファングバードに剣勲章が授与されます。 |
『多島海の決戦』 |
カラバ・作戦1 |
フィリピン、サマル島近海、ビサヤ諸島。現地時間午前二時。 時ならぬ地鳴りにたたき起こされた島民達は、何が起こったかすらわからぬうちに大津波に飲み込まれた。 現地時間午前四時。サンベルナルディノ海峡。 沿岸部の漁村はことごとく津波に呑まれ、海岸に人の気配は全くない。もし生き残りがいたとしても、この光景に正気を保てたかどうか。 海峡を、巨大なモノが航行していた。…フネではない。かつてこの近海を通過してレイテ島に迫った史上最大の海洋戦艦、大和ですらそれに比べればおもちゃの小舟に過ぎない。 島が…切り立った断崖絶壁と、その上に鬱蒼と茂る熱帯雨林を載せた島が、数ノットの速度で海峡を航行しているのだ。 百鬼要塞島。百鬼帝国が残存勢力の全てをかき集めて建造した、一大移動要塞である。 島の上、熱帯雨林の中には、数知れぬ機動兵器が見え隠れしていた。 解放戦線のセターレバルグがいる。スペシャルズのハイザックがいる。グラドスのブレイバーがいる。 それら、所属も種別もバラバラの機動兵器群には、一つの共通点があった。 「こんな連中が戦力になるのか? どいつもこいつも、死んだ魚みてぇな目をしてやがる」 吐き捨てるようにそう言った鉄甲鬼に、胡蝶鬼は同意するように目を閉じた。 「グラーの開発した大量洗脳技術…気に入らないわね」 OZのクーデターで一躍帝国軍の中核となった百鬼帝国だが、帝国軍の戦力はOZの攻勢の前に払底しており、百鬼帝国は事実上独力で人類勢力に立ち向かうことを強いられていた。 戦力を急激に伸ばす必要に駆られたブライ大帝が、グラー博士に命じて開発させたのが、新しい鬼兵士改造プラントである。 従来以上の力を持った鬼兵士を大量に生み出せる一方で、鬼兵士から自意識を奪い、戦うためだけの生物兵器に変えてしまう弊害がある。 「心を持たん戦士に何ができる! こんなゾンビどもと一緒になんて戦えるか! こうなったらいっそ…」 「迂闊なことは言わないことね。…それに、ほら」 胡蝶鬼の指し示した空に、胡麻をばらまいたような黒点が多数出現していた。カラバの機動兵器部隊・第一次攻撃隊である。 「私たちは戦鬼…全ては戦いの中で見極めましょう」 「これは…この敵は!?」 カヲル・アサヒナは、グリームヒルドからの攻撃を必死にかわしていた。 何故ここに解放戦線の機体が存在するのか。そして何故友軍であるはずのカラバ機を攻撃するのか。 混乱しつつも敵弾を回避し続けていると、カヲル機攻撃に夢中になりすぎていたグリームヒルドは、背後からテキサスマックに撃たれて大破する。 そしてコクピットから投げ出された敵兵の遺体を見て、カヲルは絶句した。…解放戦線の軍服を着た若い女性兵士。その額には鋭い角が生えていた。 「百鬼帝国め、いつかの借りをかえしてやる!」 ブラックイーグルを駆るライムント・バルテンは強敵と戦っていた。グラー博士の合体百鬼ロボが放った破壊光線を、レッドアウトぎりぎりの急旋回でかわす。 「突っ込め出番だ特攻部隊ってな! カラバ魂を見せてやるぜ!」 5連装ミサイルが、合体百鬼ロボを爆炎で包む。怒り狂ったグラーの反撃でライムントは損傷を負ったが、彼は後方へ下がることなく次なる獲物を求めて戦場の空へと飛び去った。 「おのれカラバの蝿どもめ! 未完成品とはいえ、百鬼の科学力の粋を集めた合体百鬼ロボ、貴様ら如きに落とせると思うな! 」 グラー博士のご機嫌はすこぶる悪い。心血を注いで完成させた要塞の対空防衛網は突破され、そこかしこにカラバの機動兵器が乱舞している。そんな足下に一体のボロットが駈け寄り、なんと合体百鬼ロボに殴りかかって来るではないか。無謀を通り越して不遜とも言える攻撃に、グラー博士は怒りに我を忘れた。 「どいつもこいつもコケにしおってぇぇぇっ!!」 がらくたの寄せ集めでしかないボロットが、合体百鬼ロボの攻撃に耐えられるはずがない。たちまち破壊され、首だけになって転がっていく。 「逃がさん! …むむ!?」 百鬼ロボの全身に、再び着弾の炎が花開く。ヴァイス・スティルザードが操るブラックイーグルの、支援攻撃である。 「下等な蝿め! 百鬼帝国の科学力に勝てると思うな!」 「ヴァイスさん、危険な役目をお願いしてすみません。…死なないでください」 先ほど撃破されたボロットの頭部から這いだしながら、コウジ・ツキガセは死闘を続けるヴァイスに一礼した。何度も打ち合わせた作戦通り、事は今のところ順調に進んでいる。あとはコウジがやるべき事をやるだけだ。 「…皆さん、今行きますからね。無事でいて下さいよ!」 要塞内部へ続くメンテナンスハッチを発見したコウジは、鉄と炎の嵐が吹き荒れる戦場をあとに、要塞内部へと姿を消した。 「やっと会えたぜ暴竜野郎!!」 レイ・タケダのサンシャインガンダムは、専用装備の釘バットを振りかざし、メカ暴竜鬼に躍りかかる。 「誰かと思えばいつかのザコか! 貴様がいくら突っ張ろうが、俺は勝つ! 勝った者が正義だ!」 「ザコじゃねえ! 俺はレイ・タケダだ!! 俺の名前、一生忘れられなくしてやるぜ!!」 身長40メートル級の百鬼獣は、MFの倍以上の大きさがある。重量差ともなると比較の対象にすらならない。それでもレイはMFの機動性を最大限に生かし、的確なヒットエンドアウェイでメカ暴竜鬼を追いつめていった。 「そ、そんな、メカ暴竜鬼が……!? 自ら望んで鬼になった俺がこれしきで……う、うわあぁぁぁぁぁーっ!!」 大爆発を起こしたメカ暴竜鬼を見据え、レイは太い笑みを浮かべた。 「…本当ですか!? …わかりました。何とか自力で脱出します!」 コウジは暗澹たる思いで携帯無線を切る。彼の作戦を支援していたヴァイスから、要塞に強行着陸させる予定だったミデア輸送機が撃墜されたとの連絡が入ったのだ。彼に助け出された捕虜達が、ただならぬ様子に不安げな表情を浮かべる。 (い、いけない。僕がしっかりしないと…) 「大丈夫です。みんな一緒に家に帰りましょう!」 皆を落ち尽かせるべく、空元気を総動員させるコウジ。捕虜達も(少なくとも表面上は)落ち着きを取り戻し、彼らは再び走り出す。 「威勢がいいわね。そう言うの、キライじゃないわ」 通路の角から現れたのは、髪の長い美しい女性…胡蝶鬼だった。 「そいつらを連れて行くのね。…なら、これを上げるわ」 そう言ってカードキーを投げ渡す胡蝶鬼。 「この先に試作品の百鬼獣がある。武装は施されてないけど、生きのこりたいならうまく使う事ね」 そう言って走り去る胡蝶鬼を、コウジ達は茫然と見送っていた。 「ええい、クソッ! ちょこまかと!」 メカ鉄甲鬼が揮う巨大なトマホークを、アレス・ラングレイのレプラカーンが華麗にかわす。パワーでは圧倒的に勝る百鬼獣だが、その巨体が災いしてオーラバトラーのような小型で俊敏な目標に攻撃を命中させることはかなり困難だ。一方でアレスの方も、メカ鉄甲鬼の非常識なまでに熱い倉庫に阻まれて、なかなか有効なダメージを与えられない。そして… 「面白い。ゲッターチームの他にも、まだこんなヤツがいるとはな! だが!!」 「そろそろ落ちてもらう! これで完封だ!」 一瞬…二筋の鈍色の輝線が交錯し、二つの爆炎が上がった。 移動要塞を巡る攻防戦は、双方共に決め手を欠いたまま、延々と続いていた。戦いが膠着状態に陥りかけた時、不意の地震と共に大地が割れ、巨大な機動兵器が発進する。 「こちら、エスペランザのコウジ・ツキガセです! 捕まっていた人達を救出して、この百鬼獣を奪って脱出してきました! 援護をお願いします!」 胡蝶鬼が指し示した格納庫に眠っていたのは、巨大な百鬼獣、メカ要塞鬼だった。奇襲によって格納庫を制圧したコウジ達は、胡蝶鬼にもらったカードキーで百鬼獣を起動させ、全員でここまで脱出してきたのだ。 「聞いての通りだ! まだ戦闘力の残っている機体は、コウジの百鬼獣を護衛して基地まで一端退くんだ! 俺たちも基地に戻って、第二次攻撃に備える!」 カラバ部隊の指揮を執っていたアムロの命令一下、カラバの部隊は、整然と撤退していった。 ▼作戦後通達 1:第一次攻撃隊は、移動要塞にかなりのダメージを与えましたが、撃破することはできませんでした。現在第二次攻撃隊が準備中です。 2:レイ・タケダ、アレス・ラングレイに星勲章が授与されます。 |
『赤い彗星の帰還』 |
ネオジオン・作戦1 |
地球と月の間などに存在する重力の不安定な空間は、戦争によって生じたコロニーや艦艇の残骸が流れ着いて密集することが多く、俗に暗礁宙域と呼ばれる。そんな宙域の一つに、かつてエギーユ・デラーズが設営した繋留基地、『茨の園』は存在した。 「レウルーラ、繋留完了! 続いてグワンザン、サダラーン入港します!」 入港作業を手伝っていたワ・ライ准尉が、管制室で叫ぶ。ムゲ戦争中盤で、ここを根拠地にしていたデラーズ・フリートが壊滅して以来、これほどの数の艦艇がこの地に入港したことはない。各宙港の港湾要員だけではとても手が足りず、パイロットまでが駆り出されているのだ。 「主力となるグワンザン級戦艦だけで六隻か。レウルーラとサダラーンをくわえて戦艦八隻、他の港に入ったムサカ級やエンドラ級の巡洋艦隊を入れれば、軽く三十隻を超える。アクシズの戦力は大した物だな」 ワ・ライが感心して眺めている艦隊は、宇宙要塞アクシズから派遣された先遣艦隊である。かつてのジオン公国、サイド3をOZの手から奪還し、全宇宙市民統合の象徴としての新しきジオン、ネオジオン結成を内外に誇示するために、彼らはやってきた。 「新型MSもいろいろ持ってきたみたいだな。…機種転換訓練が間に合わないのは残念だけどね」 「久しぶりだな、ハマーン。もう二十歳になったのか?」 「その口の利き方、変わらないな、シャア。…いや、総帥閣下」 かつて解放戦線でクワトロ・バジーナと名乗っていた青年は、真紅の軍服に身を包み、髪型もオールバックに変えていた。ネオジオン総帥キャスバル・レム・ダイクン。それが今の彼の名前だ。彼は間近に迫ったサイド3攻略作戦の詳細を詰めるべく、アクシズで指導的立場にある女性、ハマーン・カーンと共に作戦司令室に急いでいた。 「帰ってきてくれると…信じていたよ。これからは世界のことを共に考えよう」 「人類全体をニュータイプにするためには、誰かが人類の業を背負わねばならない。人がニュータイプとして生まれ出る世界を見るためなら、私が道化を演じる甲斐もあるというものだ」 キャスバルはハマーンの肩を叩き、司令室のドアをくぐった。 「OZ野郎め、叩き潰してやる!」 ヒロシ・ササキ少尉が操るマラサイは、ビームライフルの連射でOZの可変MS、トーラスを追いつめていた。彼はOZの前身であるスペシャルズの出身であるため、トーラスの特性は熟知しているが、モビルドールは容易く落とせる相手ではない。 「ヒロシ少尉! 前に出すぎです!」 ドネ・アルフェ少尉のフルアーマーガンダムMKIIが、すかさずマラサイの援護にはいる。大火力を誇るガンダムに追い立てられたトーラスは、自らマラサイの射線上に飛び込み、待ちかまえていたヒロシによって撃墜される。 「これで撃墜一。ドネ少尉、アシストに感謝する」 「ヒロシ少尉、この貸しは大きいですよ」 ドネはそう言ってモニター越しにウィンクして見せた。 「………俺は帰ってきた。だから、必ず取り戻すっ…!」 アルカード・レイディファルト大尉の駆るギャン・クリーガーは、モビルドール・トーラスに果敢に接近戦を挑むことで戦いを有利に進めていた。 「射撃戦に特化し、格闘を捨てた機体になど!」 ギャン・クリーガーのビームランスが、トーラスの黒い胴体を貫く。AIを蒸発させられたそのモビルドールは、その瞬間に全ての活動を停止した。 アクシズ先遣艦隊と合流したことで一大勢力となったネオジオン艦隊は、数の力でOZのモビルドール部隊を徐々に押し戻しつつあった。 「ええい! 宇宙人ども如きに後れを取るとは!」 サイド3駐留艦隊司令、ジャマイカン・ダニンガン1級特佐は、戦力の15パーセントを失ったとの報に、サイド3の放棄を決断する。 「このままではすまさんぞ! 必ず駆除してやるから楽しみにしているが良い!」 グリプスに建設したOZの化学兵器工場は、間もなく稼働する。スペースコロニーは、毒ガス作戦にあまりにも脆弱だということは、他ならぬジオン軍が一年戦争で証明している。毒ガスでもだえ死ぬスペースノイドの姿を思い描き、ジャマイカンは残忍な笑みを浮かべた。 ▼作戦後通達 1:サイド3攻略作戦は成功しました。ネオジオンの国力が大幅に増強されます。 2:サイド3で再建目前だったMD生産設備は、ネオジオン軍によって接収されました。 3:リェン・ユーウェイに星勲章、シャルル・ウィンディーに月勲章が授与されます。 |
・ ・ ・ 「宇宙に住む全ての人々に聞いてもらいたい。私はキャスバル・レム・ダイクン。 デギン・ザビによって暗殺され、志し半ばで無念の死を遂げた、ジオン公国の創始者…ジオン・ダイクンの息子である」 突如始まったその放送は、一般回線のみならず、OZ、カラバのあらゆる秘匿回線で同時に流されていた。地球圏の人々が見守る中、壇上に立った金髪の男はゆっくりと言葉を続ける。 クワトロ・バジーナとしてかつて地球解放戦線機構を支えていた男が、かつてとは違う姿で、そこにいた。 シャア・アズナブルと呼ばれたこともある。 だが、壇上でカメラと聴衆を見つめる彼は、そのどちらでもなかった。 「私はこの場を借りて、ジオンの意志を継ぐ者として語りたい。勿論、ジオン公国のシャアとしてではなく、ジオン・ダイクンの子としてである。 ジオン・ダイクンの意志はロームフェラが言うように欲望に根差したものではない。現在、ロームフェラ財団が地球を我が物にしている事実は、かつてのムゲ帝国のやり方より悪質であることに気付く。 人が宇宙に出たのは、地球が人類の重みで沈むのを避けるためだった。そして、宇宙に出た人類は、その生活圏を拡大したことによって、人類そのものの力を身に付けたと誤解して、ムゲ帝国の侵略を許してしまった歴史を持つ。 それは不幸だ! もうその歴史を繰り返してはならない。 宇宙に出ることによって、人間はその能力を広げることが出来ると、なぜ信じられないのか! 我々は地球を人類の手で汚すなと言っている。 ロームフェラと、その私兵であるOZは、地球に魂を引かれた人々の集まりで、地球を食い潰そうとしているのだ! 人は長い間、この地球というゆりかごの中で戯れてきた。しかし、時は既に人類を地球から巣立たせる時が来たのだ。 地球を自然のゆりかごの中に戻し、人類は宇宙で自立しなくては、地球は水の惑星ではなくなるのだ! それほどに地球は疲れ切っている! 今、誰もがこの美しい地球を残したいと考えている。ならば、自分の欲求を果たす為だけに、地球に寄生虫のようにへばりついていて良い訳がない! OZは、かつてのスペシャルズから膨れ上がり、逆らう者は全てを悪と称しているが、それこそ悪であり、人類を衰退させていると言い切れる! 私は亡き父の志しを継ぎ、この戦いに終止符を打つために、自ら身分を明かすことにした。 我等新しきジオン…ネオジオンは、スペースノイドの真の自立を勝ち取るために! 今ここに! 結成を宣言するものである!」 聴衆から、拍手がわき上がる。 全世界に向けて放たれたこの宣言は、”復活のシャア”を強く印象づけた。 一方で、帝国を相手に有利に戦局を進め、絶大な戦力で地球に君臨しようとするOZもまた、絶対者としての力に目覚めつつある。内部に様々な波乱を含みながら。 アフターコロニー195年。 地球圏は未だ混乱の渦中にあった。 |
次回予告 |
「俺は神になる男だ」 かつて男は、そう言って自ら侵略者の側に走った。しかし予期せざる運命が、男の立てた策をことごとく覆していく。 それはバベルの塔をうち砕いた天の雷霆なのか。 全てに決着を付けんと、漆黒の宇宙を超獣機神が奔る! 次回War in the Eaeth、『野望の終焉』 |