《ミケーネ帝国・闇の帝王玉座の間》

 異形の巨大スクリーンに、続々と飛び立つ万能要塞ミケロス艦隊が映し出される。
 その数、実に数千隻。ミケーネ帝国建国以来最大規模の軍事行動だった。

「ククク……ハハハハッ! ついに……ついに我が宿願成就の時ぞ!」

 玉座の間に突如出現した火球が爆炎となり、炎の異形へと姿を変える。
 異形…ミケーネ帝国の支配者である闇の帝王は、狂気と妄執に満ちた視線を己が軍団に向ける。

「ズールよ。我らを石もて追いし魔王よ。我らが積年の憎悪、怨念、今こそその身に受けるがいい。我…バビルが貴様の破滅の使者とならん!」

 遠き昔、バビル一世と呼ばれた闇の帝王。その君側に控えるバビルの塔メインコンピュータの生体端末である策士孔明は、先代のビッグファイアであった魔人に、うやうやしく一礼する。
 遙か昔、ギシン星を追われた反逆者であったバビル一世は、追っ手である銀河帝国軍のキャンベル部隊との戦いの中で戦塵に散った。
 しかしその脳髄は、今なお培養液の中で生きながらえ、闇の帝王としてミケーネ帝国に君臨し続けている。

「闇の帝王。コスモバビロニアのウォンから、約定通りコスモバビロニア艦隊が出撃したとの報が入りました。予定通りラグランジュ7にて我らの艦隊と合流させます」

「うむ……口惜しきものよ。なろうならこの手でズール目をくびり殺してやりたかったものを」
「幻夜からは、GRの稼働にまったく問題がないとの報告が上がってきております。陛下のご無念は、我らがビッグファイア…二世閣下が必ず晴らされましょう」
「仕方あるまいな。……ズールを討ち、返す刀でグラナダ条約軍を討って地球圏を我が物としてくれよう。クククククッ!」

 哄笑する闇の帝王を見つめる策士の顔にもまた、不気味な笑みが浮かんでいた。


『決戦宙域』
全作戦
  《A軍集団・戦艦レウルーラ艦橋》

 史上空前の大艦隊がそこに集結していた。
 OZ、ネオジオン、カラバからなるA軍集団の総数は、戦闘艦のみで一万五千隻。補給艦、支援艦艇まで含めれば、優に二万隻を超す。
 搭載する機動兵器も、旧式化した物は影を潜め、ほとんどが配備開始から間もない一線級の機体ばかりだった。

「見事な物ですね、総帥。アクシズにいた頃を思えば夢のような戦力。これならば銀河帝国とも十分に渡り合えるでしょう」

 ナナイ・ミゲルが、傍らにたたずむキャスバル・レム・ダイクンに声を掛ける。

「確かに大した戦力だ。しかしこの戦力を手に入れるため、我々は財布の底のそこまではたく羽目になった。巨額の戦時国債の償還は、子々孫々まで重い負担となって国民にのしかかるだろう」

 当たり前と言えば当たり前の話だが、戦艦も機動兵器もただでは手に入らない。
 戦争とは莫大な資金を必要とし、その金額たるやとても通常の国家予算でまかなえる金額ではない。そこでどうするかというと、政府は国債を発行して国民からお金を借りるのである。
 悪いことに、銀河帝国との戦いは人類史上空前の総力戦であった。
 その借金は今や天文学的金額にふくれあがり、どの陣営も既にして経済的にはほぼ破産しているも同然の状態になっていた。
 この戦いに敗北すれば、人類という種そのものが滅び去ることが全人類の共通認識となっていなければ、三陣営はとうに崩壊し、未曾有の大恐慌が社会経済を破壊し尽くしていたかも知れない。

「……例えどのように辛い明日であろうと、明日という日を人類が迎えるためには我々は前に進み続けねばならん。全人類をニュータイプにするまでは、まだまだ終われんよ」
 キャスバルは、艦隊が向かうべき深宇宙に視線を向ける。
 艦隊の前途には、あまりに深い闇が広がっていた。



《B軍集団交戦宙域》

 グラナダ条約機構軍は、その持てる兵力を二つの軍集団に分散していた。
 OZ、ネオジオン、カラバの艦隊からなるA軍集団と、新たにグラナダ条約機構軍に加わったベガ星軍、銀河帝国反乱軍からなるB軍集団である。
 数に劣る条約機構軍としては、艦隊は二分するよりも統一指揮下におくことが望ましいのは当然だが、いかんせん基盤となる文明そのものが違うため、言語、コミュニケーションシステムから軍組織の構造、戦略戦術に至るまで、これでもかというほど異なっている。これでは統一指揮下におくことなど出来よう筈もない。
 更にいうなら、ミノフスキー粒子の存在で電波というもっとも簡便なコミュニケーション手段を封じられた現代、統一された意志のもとで運用できる兵力には、自ずと限界が存在する。
 A、B軍集団を併せて、戦闘艦のみで三万二千五百隻という史上空前の宇宙艦隊は、その限界を完全に超える兵力であった。

 そのような理由から採択された『分進合撃』という方策であるが、軍を分ける以上どうしても各個撃破の危険や意思統一の不徹底が懸念されることになる。
 それを防ぐために、トレーズは戦闘部隊の中から、二つの軍集団の意思疎通のための連絡要員を編制していた。戦国時代に使われた『使い番』である。
 激戦宙域を突っ切らねばならないその任務は、平和な呼び名とは裏腹にひどく過酷なものであった。

「どうやらここまでのようね」

 連絡要員として配備された数少ない母艦、その艦長であるセリス・ローレンスは、勘の被害状況の報告を聞いて唇をかみしめる。

「副長。待機中の連絡要員全員に発艦を命じなさい。我が艦は、これから彼らが戦場を離脱するための盾となります。……ごめんなさい。巻き込んでしまうわね」
「了解。気にせんでください。みんな、この任務に志願した時から覚悟はできとります」
 副長は、ニヤリと笑ってカタパルトデッキへ通信を入れる。そしてセリスは艦を守らんと奮戦している直援機に短距離レーザー通信で命令を発した。

「直援の機動兵器部隊は、発艦中の連絡要員を何としても守りなさい!」
「……無茶言いやがるぜ! 任せとけ。奴らには指一本触れさせやしなねえよ!」

 直援部隊を率いるユウキ・エイガから通信が入る。そして最後の一機が発艦した数分後、彼女の艦は敵の集中攻撃を受けて爆散していった。



《百鬼科学要塞島・交戦宙域》

「始まった……か」

 ブレックス准将は、目の前で始まったミケーネ・コスモバビロニア連合軍と、銀河帝国軍との戦闘を注視していた。
 ミケーネ・コスモバビロニア軍の監視のために派遣された彼の艦隊だったが、予想に反してミケーネは彼らに襲いかかっては来なかった。
 彼の艦隊は銀河帝国からの攻撃には晒されている物の、それは極めて散発的な物にとどまっていた。
 その理由は……この方面に配置された銀河帝国軍が、ミケーネの猛攻に圧倒されているからだった。

「こ、これが戦闘獣……これがミケーネの真の力だというのか!」

 ファブリッツィオ・バッスィーニは、目の前で繰り広げられる戦闘に圧倒されていた。
 彼は、先に宇宙基地を巡る戦いでミケーネの機械獣と交戦した経験があった。
 ファブリッツィオは、かつての愛機トーラスを、頭部のハサミで両断してのけた機械獣グロッサムX2を思い浮かべる。
 機械獣は確かに強敵だった。しかし同時に、決して勝てない相手ではなかった。
 しかし……

「こいつらは……次元が違う……」

 これまでの戦いでも、戦闘獣は散発的に投入されてきた。しかし、大量かつ集中的に投入された戦闘獣軍団の戦闘力は、はっきり言って規格外だった。
 装甲をぶち抜かれ、切り裂かれて爆散する円盤獣。
 機体の動きに、操縦される機械特有のぎこちなさや、AIのかたくなさがまったく感じられない。その動きは、まるで生身の猛獣のように自然だった。

「俺では…奴らに勝てんというのか!」

 眼前に迫るマグマ獣を撃墜しながらも、ファブリッツィオは悪夢の如く蹂躙する戦闘獣軍団を睨みつけていた。



《A軍集団・交戦宙域》

 同じ頃、A軍集団もまた銀河帝国軍の猛攻に晒されていた。

「さあ、行くわよアイシャ!」
「わかっっていますわ。ガル隊長、しっかりエスコートを頼みますわよ!」

 マナミ・ハミルとアイシャ・リッジモンドの駆る鮮紅の機動兵器、スィームルグSが華麗に戦場を駆ける。
 マナミの直属小隊である『いちごクレヨン』を率いるガル・シュテンドウは、遅れじとばかりに部下達に号令を掛けた。

「みんな! スィームルグを守り通すぞ。みんなの命、この俺が預かる!」

 彼らの使命は重大だった。最前線で戦う部隊に、戦艦リーブラの主砲が発射されるタイミングを伝えに行くのだ。
 かつてのコロニーレーザーに匹敵するリーブラの主砲をもって、待機している決戦部隊が皇帝の元へ向かう血路を開くのがこの作戦の要である。
 マナミの知らせが届かねば、味方の攻撃によって多くの味方が死ぬことになる。
 しかし、張り切ってマナミを追う彼らに、狂気に満ちた視線を向ける者が居た。

(ナカマ………オレニハナカマハイナイ……オレノテノナカニハナニモナイ……ミンナシンデシマッタ……ナニモカモ…コボレオチテイッタ……)

 Ξガンダムのコクピットで、ヴァレス・ベルメインは、その精神を次第にゼロシステムによって浸食されていった。
 孤独が…死への願望が歪んだ殺意となって燃え上がり、いちごクレヨン小隊めがけて必殺のファンネルミサイルを放つヴァレス。
 しかしそのファンネルミサイルは、突如襲いかかったファンネル群のビームによってことごとく撃墜された。

「ケッ! 一人や二人はそういう(裏切る)のが居るんじゃぁねぇかとは思ってたがよぉ!!」

 ゼロシステムの人形と化したヴァレスに、同型のΞガンダムが襲いかかる。
 終末主義者による裏切りを警戒していたエドウィン・ファンの機体である。

「オレノジャマヲスルナ!」
「吠えるなよ。裏切り者は裏切り者らしく、薄汚くくたばりやがれ!」

 ΞガンダムとΞガンダム。グラナダ条約機構軍が誇る最強の量産機動兵器が相討つ中、リーブラから放たれた光は、その進路上にある命を瞬時に焼き尽くしていた。
 マナミの伝令はかろうじて間に合った物の、交戦中の銀河帝国軍がそう簡単に撤退を許すはずもなく、結果として多くの人命が失われることとなった。



《地球圏・コロニー護衛総隊》

 マシンガンの砲弾に全身を貫かれ、爆散するマグマ獣。
 自ら仕留めた敵機動兵器から視線を外したリスティア・フォルンの視界に飛び込んできたのは、先ほどから頭痛の原因になっている珍妙な機動兵器の群れだった。

「ほんと、勘弁してもらいたいわね。何なのよ、アレ」
「……気にするな。気にしたらお前の負けだ」
「そ。ランドールの言うとおり。見なかったことにして戦ってた方が良いわよ」

 ランドール・ランスとソノザキ・ミスズの励まし(?)に手を振って応え、リスティアは引きつった顔をゆがめて無理矢理笑顔を作る。

 そんな彼女の苦労も知らぬげに、珍妙な機動兵器ことボロドールは、元気にザクマシンガンやジャイアントバズをぶっ放していた。
 ボロドール。人手不足と予算不足にあえぐコロニー護衛総隊が作り出した起死回生の無人機動兵器。
 ただ同然で製造可能なボロットシリーズを無人機用に再設計し、そこにジャンクパーツで組まれたモビルドールユニットのコンパチ機を組み込んである。
 ビーム兵器など使えないため、火力は専らザクやジムが使っていた中古の実体弾使用火器を装備し、格闘戦はボロットパンチ一本槍。
 その開発にはボロットシリーズの生みの親である光子力研究所の三博士から、この開発のために拘束を解かれたツバロフ元技師長など、そうそうたる面々が顔をそろえている。
 コストがかからず人命を損なわない究極のボロット。
 カーンズとボス。ボロットに取り付かれた暑き漢達の、一つの到達点がここにあった。

「ガンキャノン乗りの僕には、ありがたい前衛なんですけどね」

 アイム・アシモフは、苦笑しながら次のターゲットに砲口を向ける。
 彼の視線の先では、ボロドールと一緒になって敵機を殴り倒すファ・シャンクンのビッグコングと、華麗に戦場を舞うクロワ・オオサカのGP01がマグマ獣部隊を圧倒している。前衛の数に不足はなかった。

「これで、4機目!」

 轟然と火を吐いたガンキャノンの巨砲が、また一機マグマ獣を火球に変える。
 本隊進発の隙をついて後方攪乱を狙ったマグマ獣部隊は、所定の目的を果たせぬままに壊滅に追い込まれていった。



《決戦宙域》

「戦艦マッケンゼン、大破炎上中! 脱落します!」
「戦艦ゲーベン、轟沈!」
「艦長! ムサイ2隻に生存者救出作業の許可を!」

 次々ともたらされる悲報に、砕けるほどに奥歯をかみしめながら、シンディ・ヤマザキは前方の空間を睨みつけた。
 リーブラが啓開した回廊の先には、見事なT字を描いて布陣する銀河帝国近衛艦隊が十字砲火を浴びせかけている。

「ならん。これはどれほどの犠牲を払ってでも勝たねばならぬ戦だ。軽巡一隻といえども貴重な戦力を割くわけにはいかん。例え百年の汚名を被ろうともな」

 全ての火器が使用できる敵に対し、こちらは艦の前方に配置された砲しか使用できない。グラナダ条約機構艦隊は、対馬沖海戦におけるバルチック艦隊や、レイテ沖海戦における西村艦隊に近い危機的な状況にあった。しかし……

「火星より3年・・・死地におかれ続けた人類が編み出した戦術の数々は数千を超える。ただ今のこの一瞬のみにすべてをたたきつけてやろう。大丈夫だ、スペシャルズにおいて敵味方に恐れられたロジャー・ウィルダネスを信じろ。必ず我々は勝つ。」

 行き足を落としたネオジオン艦隊に代わって前面に驕り出たカラバ艦隊の旗艦、ネェル・アーガマのブリッジで、ロジャー・ウィルダネスは不敵にうそぶく。
 コロニーレーザーに匹敵するハイメガ粒子砲を続けざまに発射して敵艦隊を切り崩すネェル・アーガマに、雲霞の如く敵艦載機が殺到する。

「アドラー、今が天翔けるとき! お前の力を見せてやれ!」
「カトンボ如きにロジャーさんはやらせないです!」

 銀河帝国の守護神、青騎士ヘルダインと赤騎士デスカイン。これまで戦った敵とは桁の違う強敵達に、ライムント・バルテンとシホ・キサラギがアシュラの如き奮戦を見せるも、衆寡敵せず。防空網を突破した敵機動兵器によって一隻、また一隻と条約機構の艦艇が喰われていく。

「この程度で後ろに下がるな! 指揮が取れないだろう!」

 日頃温厚なロジャーが、声を荒げて叱咤する。

「ロジャー司令。重巡アタゴが接舷可能です。司令部の移乗を進言します」

 ロジャーは首を横に振る。いつ沈んでもおかしくないネェル・アーガマではあるが、今の戦況では、司令部の一瞬の判断の遅れが艦隊そのものの破滅に直結する。移乗を行うために空白の時間を作るわけにはいかなかった。

 いつ果てるとも知れぬ死闘。しかし転機は不意に訪れた。
 ミケーネ・コスモバビロニア艦隊が銀河帝国主力艦隊を突破し、その切り札であるGRシステムを積んだ三機のGR、GR2、GR3、そしてカラミティを発進させたのだ。

「カオスイリュージョン」
「メテオストライク」
「ソウルブレイカー」

 機械仕掛けの神々と戦闘獣軍団の猛攻により、鉄壁に見えた近衛艦隊の戦列に乱れが生じる。
 その気を逃さず、マーチウィンドの精鋭達が、皇帝ズールを急襲した。
 先頭に立つのは明神タケルのゴッドマーズ。そしてフリード星の守護神グレンダイザーとガッタイガー。ビアル星からの亡命者ザンボット3である。

「ズール! 悪業の報い、その身で受けろ!」
「「フリード星の人達の無念、思い知れ!」」
「人間爆弾にされた人達の仇、取らせてもらいますよぉ!」

 四機の合体攻撃がズールのバリアを貫き、その巨体を焼き尽くす。

 ワール司令の座乗する旗艦も、ゴッドマジンガーとグレートマジンガーの攻撃を受けて爆散し、バンドックもまたアムロ、キャスバルらのファンネルで航行不能になったところを、ZZガンダムのハイメガキャノンの直撃を受けて大爆発を起こした。

「おのれ……おのれ地球人ども! おのれマーズ! こ、このワシがこんな所で滅びるというのか!? 神の声を聞き、神となることを約束されたワシが……こんな所で……」




 皇帝の死により、銀河帝国軍は潰走を始めた。
 その一部はマーグら反乱軍と、ショウヤ・サガミらカラバ戦士の体を張った説得により条約機構軍に投降したが、その多くは太陽系の各地に散り、かつてのジオン残党以上の脅威として今後の禍根を残すことになる。
 しかし、潰走する彼らを追撃する余力など、今の条約機構軍には残されていなかった……

▼作戦後通達
1:皇帝ズールは倒れ、グラナダ条約機構は、この戦いの勝利を宣言しました。
2:ズール皇帝、ワール司令、サグール長官は戦死しました。
3以下の者に、剣勲章が授与されます。シンディ・ヤマザキ、シホ・キサラギ、ロバート・ラプター、ユキ・タチバナ、カイト・キサラギ、ブッフバルト・エンテンバーク
5:以下の者に、星勲章が授与されます。ロバート・ラプター、ユキ・タチバナ、ブッフバルト・エンテンバーク




《アステロイドベルト・某所》

 かつてシャピロ・キーツが最期を迎えたアステロイド要塞周辺宙域に、突如巨大な空間のゆがみが出現した。
 揺らぐ宇宙から現れたのは、三年前に地球を襲い、オペレーションデイブレイクによってこの地を追われたはずの異形の艦隊であった。

「ククククク……クハハハハハッ! 帰ってきた。再び貴様らに悪夢をもたらすためにな!」

 ムゲ・ゾルバドス。ムゲ宇宙という異世界を経由することによってグラドスの刻印を超えた星間帝国は、地球とこの地に封じられた銀河帝国を叩くべく再度大艦隊を派遣してこの地に侵攻したのだ。

「貴様らの悪夢は終わらぬ。永遠にな。ははははははっ!!」

 ギルドローム将軍の哄笑が、旗艦の艦橋にこだまし続けていた。



《BF団総本部・バビルの塔》

「……そうか。よくやってくれた。礼を言う」

 ビッグファイア・バビル二世こと、古見浩一は、通信画面の幻夜をねぎらうと、集結しているBF団の精鋭達の方に向き直る。

「ズールを打倒したことにより、作戦は第二段階へと移行する。我々はミケーネと共に疲弊したグラナダ条約機構軍を討ち、地球圏の覇権を手にするのだ!」
「「「「「我らの! ビッグファイアのために!!」」」」」

 十傑集を中心とするBF団エージェント達が一斉に唱和する。
 その有様を、策士孔明は皮肉な笑みを浮かべて眺めていた。



《????》

「コスモバビロニアの艦隊が帰ってくるわ。さすがに損害は大きいようだけれど、致命傷には遠いようね」
「……今の内に仕掛けて少しでも戦力を削っておこう。銀河帝国が倒れた今、ウォンやマイッツァーはすぐにでも動き出すぞ」

 女性をかたどった巨大な船首像を持つ、帆船を模した宇宙戦艦の艦橋で、少年と少女は語り合う。

「行こう。クロスボーンバンガードの初陣だ」

 クロスボーンバンガード。それはコスモバビロニアが捨てた海賊の名。
 髑髏の旗を押し立てた海賊船は、『先代』の艦隊を奇襲するべく静かに行動を開始した……


次回予告
 再び現れた『帝国』の脅威が地球圏を襲う。地下勢力もまた蠢動を開始する中、疲弊したグラナダ条約機構軍はいかにして立ち向かうのか。
 次回War in the Eaeth、『悪夢再び』

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